歴史をつくった洋菓子たち 長尾健二著

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洋菓子専門月刊誌『ガトー(GATEAUX)』の編集に30年近く携わってこられた長尾健二氏の著書「歴史をつくった洋菓子たち」の読み終えたのでご紹介したいと思います。

本を購入したきっかけ

この本を購入した当時、ハーブやスパイスの歴史を調べていました。古代ギリシャ人がパンのようなお菓子を作っていたと知り、お菓子がいつどこで生まれてどのように広まっていったのかを知りたいと思いました。本屋で偶然この本見つけて迷わずタイトル買いしました。

内容

本書は二部構成になっています。第一部では洋菓子の歴史をたどる上で欠かすことのできない信仰、パティシエと呼ばれる職人の歴史、本書に幾度となく登場するアントナン・カレームについて書かれています。第一部を読むことで、いくつかの洋菓子の由来や伝説について書かれている第二部を更に楽しむことができます。



最初は難しい歴史書なのでは、と身構えていましたが、読み進めていくうちに当時の人々の暮らしぶりが目に浮かんできて想像力をかきたてられ楽しく読み進めることができました。

著者が洋菓子の由来や伝説を楽しむためには食文化史、文化史など当時の背景を理解することが大切であると記している通り、違う時代、違う国の違う文化、違う言語、違う価値観をもった人たちの日々の営みに想いを馳せながら読み進めることで、洋菓子にまつわる話をより楽しむことができます。


勝手にみどころ紹介

くわしい内容はさておき、私が読んでいて気になったみどころを3つご紹介します。

1.国によって変化していく洋菓子たち
それぞれの国の文化や風習に合わせて使われる食材、見た目、食べ方、名前が違う洋菓子たち。それぞれの国でどのように広まってきたのがを知ることができます。

2.様々な階級の人たちによって変化していく洋菓子たち
贅沢な食材を別のものに置き換えたり、レシピにアレンジを加えたりして、上流階級だけでなく、様々な階級の人々が洋菓子を楽しんでいたことがわかります。


3.アレンジ力とプロデュース力
レシピの出どころや創作者についてはさまざまなエピソードがあるようです。真意はともかく、当時の人々のアレンジ力、セルフプロデュース力、それを支える人たちのサポート力の高さがうかがえます。


番外編になりますが、作中にエッセンスのきいたちょっとしたエピソードがいくつか盛り込まれていて、当時の人々がユーモアたっぷりに話をしている様子やうわさ話で盛り上がっている姿が目に浮かびます。

読み終わって

お菓子がいつどこで生まれ、どのように広まっていったのかが知りたくて手に取った本ですが、洋菓子の歴史は人々の暮らしと共に姿や形を変える多様性に溢れていました。

時が変わって現代を生きる人々も様々な国の文化や風習をうまく取り入れて、家族や大切な人たちと季節や行事を楽しんでいます。

洋菓子のレシピもアレンジが加えられ、SNSや動画投稿サイトには見ているだけで幸せになる洋菓子であふれています。

今も昔もレシピ開発やアレンジ力、そしてセルフプロデュース力は大切なんだなと改めて実感します。

人を楽しませたり、癒やしたり、しあわせな気分にしてくれるすてきなお菓子たち。何だかもっと自由にお菓子を楽しみたくなる一冊です。

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